2009年11月30日
ひよどりが鳴けば
ひよどりが鳴けば
空には
黄桃色の噴水ができる
その噴水のむこうには
樅の木や熟した柿の葉や
尾花や白旗雲がきらめいている
胡麻色の山山が
ゆっくり身をおこすと
空の芯は
静かな時計のように
けわしい雲の通り路に
おびただしい小石の雨をふらせる
けれど
ひよどりのこころには
なにもきこえない
鼓膜だけが寒そうにふるえている
田のくろの黒豆の繁みで
ひよどりの思い出は眠った
ふもとの村の
かげまつりのあの洞の底の
ひとすじの光芒のように
その眠りの水脈は
ほのめきながらきえては
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