ひよどりが鳴けば

ひよどりが鳴けば

空には

黄桃色の噴水ができる

その噴水のむこうには

樅の木や熟した柿の葉や

尾花や白旗雲がきらめいている

 

胡麻色の山山が

ゆっくり身をおこすと

空の芯は

 

静かな時計のように

けわしい雲の通り路に

おびただしい小石の雨をふらせる

けれど

ひよどりのこころには

なにもきこえない

鼓膜だけが寒そうにふるえている

 

田のくろの黒豆の繁みで

ひよどりの思い出は眠った

ふもとの村の

かげまつりのあの洞の底の

ひとすじの光芒のように

その眠りの水脈は

ほのめきながらきえては

 

 

カテゴリー: 声の風景 — admin 23:28  コメント (0)
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