風は

風は

きのうやあしたのすきまから

ふいてくる

いろとりどりのろうそくの火を

はこびながら

 

風が

音をたてているのではなく

あれは

物たちのよろこびの声だ

 

よろこべば

物はみな

風のように旅ができる

炎の旅だ

 

ぼくは風のかげで

いつも風のまねをしている

 

風のことばは

雲の群の足音

あるいは走るけものの耳

にじみあがる夜明けの海のうねり

さけんでるさざえの帆

あるいはあえぎあえぎ夜を

もちあげつづけてる

樹木の骨

稲びかりする声のない声

風は眠れない

風の踊る手は

火をつける

ぼくも火をつける

みえない火事だ

世界の淵へむかって

静かな炎が

チカチカ

ひろがってゆく

カテゴリー: 声の風景 — admin 23:43  コメント (3)
トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

3件のコメント »
  1. はじめまして。とつぜんのコメントをお許しください。

    私は昨年、ある古本市で「ユリイカ」の1979年、作品総特集を偶然手にし、靎見様の詩に出会いました。
    「声」と云う作品。

     てんとう虫は
     自分の声を
     さがしています 

    この詩を声にして読んだときのことは今でも忘れません。
    何度読みかえしたことでしょう。

    恥ずかしながら私も詩を描かせていただいております。とは言っても、こっそりひっそりとでございます。

    靎見様の詩にもっとたくさん触れてみたい、風に触れてみたい。と思う私の願いが今日、叶ったのでございます。

    なんて、なんて素晴らしいことでしょう!

     てんとう虫はくるしいのです

    この部分に声がくると私は何故かしら声が、心が「ぐぅぅ」となってしまいます。

    何故でしょう。本当に、何故かしら…。

    たびたびこちらのサイトにお邪魔するやもしれません…。

    てんとう虫よりももっとあしあとは小さいかもしれませんが、とことことやってきます。

    はじめてのコメントなのに長々と失礼いたしました。

    とても感動しております。

    コメント by 緑川 美樹 — 2010年4月11日 01:57
  2. 緑川さん、こんにちは。

    『声』 
    てんとう虫は
    自分の声を
    さがしています

    S54.10.3の作。
    僕が生地東京を離れ、淋しく不安な日々を懐かしく思い出します。

    『てんとう虫(天盗虫)』からイマージュがひろがっていったと思います。

    作品を通して心のふれあいができるなんてとても嬉しいことですね。

    H22.4.15 大分にて

    コメント by 靎見忠良 — 2010年4月29日 20:59
  3. お返事のコメントをありがとうございます!…しばらくパソコンの調子が良くなくて久々のログインで。。。

    てんとう虫…天を盗む虫…天盗虫

    人間の靴をはいたのですね…。

    また声に出して読んでみたいと思います(^-^)

    コメント by 緑川 美樹 — 2010年5月18日 09:12
コメントをどうぞ





(一部のHTMLタグを使うことができます。)
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>