2009年11月30日
みにくい象
わたしは目を閉じている小さな象である
喧噪そのものの夕暮れの往来を
ゆうゆうと歩く象である
わたしがみにくい小さな象ならば
あなたがたはいったいなんだろう
路上にちらばるあなたがたの影を
わたしは知らない
ただあなたがたの足音に
地を踏みしめるなどという
そんな真実めいたひびきを
わたしはふれることができない
あなた方の無限大にとどくすばらしい視野を
わたしは知らない
ただあなたがたのまじめな言葉の世界にさえ
そんなぼうぼうとしたひろがりを
わたしはふれることができない
二つの耳を帆のようにいっぱいに張りながら
自由に鼻をくゆらせながら
暗い町の入口の中へ
わたしは歩んでいく
コメントはまだありません。