みにくい象

わたしは目を閉じている小さな象である

喧噪そのものの夕暮れの往来を

ゆうゆうと歩く象である

わたしがみにくい小さな象ならば

あなたがたはいったいなんだろう

路上にちらばるあなたがたの影を

わたしは知らない

ただあなたがたの足音に

地を踏みしめるなどという

そんな真実めいたひびきを

わたしはふれることができない

あなた方の無限大にとどくすばらしい視野を

わたしは知らない

ただあなたがたのまじめな言葉の世界にさえ

そんなぼうぼうとしたひろがりを

わたしはふれることができない

 

二つの耳を帆のようにいっぱいに張りながら

自由に鼻をくゆらせながら

暗い町の入口の中へ

わたしは歩んでいく

カテゴリー: みにくい象 — admin 23:47  コメント (0)
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